だいしろぐ

大志郎の日記。面白い人の話を聞いたり、アイディアの備忘録も兼ねて

「居場所」の軸をどうするか?。中野区江古田のイベント『ファミコンあつまる』に参加して考えたこと。

いろんな対人支援(こども・若者・困窮者など)の文脈上で「居場所」というものを開設する、ということはよくおこなわれている。
ひらたくいえば一定の時間、一定の空間を用意して、「ここに自由に来てもいいよ」と呼びかけ集まりすごしてもらうのが「居場所」の主旨なのだけど、当たり前だが不特定多数の人間が一カ所に集まって「気分良く」「楽しく」「すごす」ということは大変難しい。

なにかの「軸」というか「たて」がない、つまりそこにいるスタッフやメンバー同士で「ただいる」「ただおしゃべりする」という状態は、想像以上にハードルが高い。

おしゃべりなどを楽しむためには「コミュ力」という通貨が必要だけど、残念ながらこの通貨はリアルマネーの所有額と比例する傾向があるのではないかと思う。なんらかの状況からリアルマネーが欠乏した状況だと、同じように「コミュ力」マネーも欠乏しがちだ。

いきおい居場所では「何か」をすることになるが、では「何を」するのか?
「みんなで料理」とか「みんなで行楽」とかよくやるけれど、もう少し何かないかなー、とはいつも思う。

支援系の文脈であろうと、ウェーイ系の文脈であろうと、人が集う枠組みはそれはすべからず「居場所」といえるわけで、(参入障壁の低さを別にして)本質的な部分は変わらない。
構成メンバーごとバラバラのリテラシーを考慮しつつ、「誰にでも来られる居場所」と「すごくて楽しい居場所」というものを両立させることに、主催者側の人たちは悩んでいる部分もあるのではないかと(もちろん「誰にでも来られることが最重要!」という考え方もあるだろうが)個人的にいつも思う。

何か面白い軸はないだろうか。

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中野区・江古田の公民館の一室を月一回借りる形で開催されている「居場所」に、「ファミコンあつまる」がある。
ファミコンとスーパーファミコンをプロジェクターにつなぎゲーム画面をスクリーンへ投影、約200本近いゲームソフトを並べて誰でも自由にプレイしてもいいという夢空間で、ご覧のように壁際にはソフトがずらり。

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2015年の12月よりスタートし、おじゃました回が6回目の開催だという。12時開場から30分もしないうちに常連だという近所の子ども達がやってくる。
早速壁際からソフトを探し出してやり始めたのはドラクエ4。彼のセーブデータが入っているとのことで、来るたびごとに進めているのだそうだ。押し寄せる子ども達のあとに、ぽつぽつと常連の大人達も来はじめる。
(写真が取り忘れたが、この常連の方のチョイスが「コンボイの謎」だったので、いろんな意味で盛り上がった)

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「居場所」の雰囲気は、ほぼ「友達の家」だ。外部化された友達の家。主催者が用意したお菓子やジュースを貪り、ごろごろしながらファミコンをプレイする。ゲームの順番を待っている時はそれぞれ自分のDSをやったり備え付けの漫画を読んだり、ゲーム画面が見えるので神プレイがおこなわれれば一喜一憂したり。この緩く場を共有している、という感覚も、まんま「友達の家」あるあるだろう。

主催者であるライターの森脇大志さんに話をうかがった。

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── この「ファミコンあつまる」は、どのような主旨で開催されてるのでしょうか?

「『ファミコンなどのレトロゲーをいろんな人と遊んでもらう』というそのまんまの主旨です。ただ、実はゲームはあくまで媒介なんですね。それらを媒介として、遊びの場を作りたかったんです」

「中野にある坊主バーの釈源光さんと交友がありいろいろとアドバイスをいただいているのですが、自分がこの場を開催する前に、彼から『教養とは自分が一文言いえることである』という言葉を貰って、影響を受けたんですね。じゃあ『自分にとっての教養とは何か?』と考えたら、それはゲームだったんです」

「ちょうどその時、中野の駅前にあったゲームバー『ビーダッシュ』が閉店(2015年12月)したんです。そこには500本以上のソフトがあったのですが、ゲームが出来る場所が消えてしまった。それを目の当たりにした時『じゃあ、自分がやるしかないな』と思ったんです。そんなふうに『やりたいな』と『やらなきゃな』のあわいみたいな感情で、この『ファミコンあつまる』は立ち上がりました。

── 現在どのような人が集まっていますか?

「今は圧倒的に子どもが多いです。前回大人3人で子ども15人の時には、本気でどうしようかと思いました。想定外に子どもが来るので、児童相談所や警察などに事前に開催の主旨などを説明しつつ相談し、先方の担当者と連絡を取り合える体制にしています。基本的に誰が来てもOKなのは変わらないのですが、今後はお年寄りにアプローチしたいという思いもあります。その方法が今後の課題ですね」

── 基本的なところですいません。これは「居場所」なんでしょうか?

「自分としては『居場所』という意識はゼロなんです。手作りチラシによる広報でも『ファミコンやりたい人集まれー』というだけで、興味がある人はどんどん来て下さいというスタンスにしています」

「坊主バーの和尚からは『これは辻堂だよね』といわれました。『辻』というのは交差点の意味なんですけれど、そこに経っているお堂が『辻堂』です。昔のお坊さんは交差点に仮のお堂を作って、そこに人を集めて説法などをおこなっていたんですね。『人を集めて』というより、もともと『人が集まっていた』交差点で説法するための装置が『辻堂』でした。まさにこの『ファミコンあつまる』はその辻堂をめざしたものなんです」

── 今まで開催して印象に残っているエピソードはありますか?

「一番最初に来た7歳の女の子が、まよいなくソフトの山から『上海』を取り出した時ですね。『なんで?』と聞いたら『おじいちゃんがやっていたから』だと」

「前回も、SF版の『ストⅡ』を8歳くらいの子が選んだんですけれど、それを隣で見ていた子が携帯電話をかけ出し『パパ、ここにパパが得意だって言っていたストⅡがあるからここに来て』と(笑) あとは目の前で『グラディウス』をプレイしながら大人から中学生、中学生から小学生へ『コナミコマンド』がリアルタイムで伝えられていく瞬間を目の当たりにして、それは感動しましたね」

「こんなふうにゲームにおいての世代間継承がおこなわれたり、おこなわれていることが確認できたりすることが、やっぱり自分にとっての学びになりますね。世代を超えた文化の風通しを良くする『辻堂』というコンセプトがちゃんと機能しうるのだということが実感できました」

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というわけで自分も子ども達にまじって遊んできた。
なんというか、ファミコンやスーファミが、すでに古典ボードゲーム的立ち位置に存在することが出来るのだなー、というのが素直なおっさんの感想。
(大画面でファミコン、というと『ファミコンロッキー』をすぐ思い出してしまうのが、見事におっさん)

辻堂という考え方が面白い。
「ファミコン等の古いテレビゲームをやらせるイベント」は、もっと大規模かつ有料でやっているところがあるけれど、方向性の違いを感じた。 「居場所」として考えた場合(主催者の意図は別として)、ゲームカルチャーの洗礼を受けた人間が多数となっている現在、確かに「ファミコン」は年齢の壁を貫くことが出来る柱となるものだろう。
そもそもゲームにおいては「身体的差異や社会的リテラシーをうまく平均化/リセット」することが出来るのが良いゲーム(の一条件)ともいえるし、そういった意味で初期のファミコンに多いアクションゲームにおいてはその平均化が強く意識されているように思う。

個人的に墨田区で開催している「こども食堂」運営にも関わっているのだけど、「食」という超汎用性的行為であるがゆえにユニバーサルすぎて逆に人が来づらい・選んでしまう、という思いは若干あり、じゃあ「こどもゲーム遊び場」なんかもありなんじゃないか、などとは思った。
(実際展開しようとすると大変だろうが)。

「アトランティスの謎」を20年以上ぶりにやった。攻略ルートや隠し扉の位置を指先が覚えていることに自分自身が一番驚愕。初回プレイでまさかの90面越えの快進撃をするも、97面まで進んだところで「ブーツ」を取り忘れていたことが響いて詰んだ。かなり悔しい。
「こうもりのウンコに当たって、石化して死ぬ」という不条理。これが昔のゲームであり、これがユニバーサルということなんだと思う。(違

開催場所&参加方法

●開催日時
毎月第一日曜日 12:30~20:00(2017年現在)

●参加方法
開催日に直接会場へお越し下さい。(事前連絡・申し込み不要)

●開催場所
中野区江古田区民活動センター
〒165-0023 東京都中野区江原町二丁目3番15号
→アクセス
JR中野駅北口から関東バス中27江古田の森行、中25練馬駅行、中28江古田駅行「江古田3丁目」下車徒歩4分・JR中野駅北口から中41江古田駅行(丸山営業所経由)「江古田区民活動センター・江古田地域事務所」下車徒歩3分・都営大江戸線「新江古田」駅A1出入口徒歩7分
http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/175200/d002449.html